吉永小百合映画「おはん」原作宇野千代

色街の女と浮気して、
妻と別れた男。
元妻と再会して、同棲している女の目を盗んで、
元妻と密会を重ねる。

生活しているよりも、
密会しているほうが、
自分の性的魅力または人間的魅力で勝負して勝っているのだと、
信じる根拠があるが、
しかしそれは立場の違いというもので、
この話のように、
元妻と密会するという設定にすると、
単に立場の違いであることがよく分かる。
ロミオとジュリエットも、3年くらいたてば、
ロミオの浮気癖にジュリエットが腹を立てるようになる。

情けない男が一人と、
強い女が二人だ。

最後の手紙が名人芸である。
言葉の力がくっきりと出ている。

意地なんでしょうね。
現実的かといえば、現実的ではない気がする。
意地があるからこんな話が出来上がり、
言葉の技で読ませる。
ストーリーとしてもっとすごい話なら、現実にいくらでもある。

意地はすごいからね。
おおむね、不幸を持続させる。

現実には、強い女ならば、他の生き方ができるはずで、
やはりおとぎ話の一種のようにも思う。

現代の東京の言葉も
工夫すれば味わいが出るはずだろう。
東京人の行動の味わいが薄くなっているとは思わない。

この言葉に慣れすぎていると
味が分からなくなるのだろう。
地方の言葉を使っている人とか、
外国語を使っている人のほうが
東京言葉の味が分かるのかもしれない。

むしろ、映像技術で、東京人のいまを表現したらいいのだと思う。
言葉はいつでも足りないものだ。
映像ならアメリカ人でも分かってくれるだろう。