あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ

あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
小野茂樹

俵万智「あなたと読む恋の歌百首」によれば、
歌集の中では二首前に
「開きたる胸乳のごとく空揺れて嫁がざる日のきみなしすでに」
とあり、
年譜によると、雅子という女性を愛するが、彼女は結婚してしまう。
のち作者も別の女性と結婚。しかし雅子も作者も離婚し、二人はやがて結ばれる。

結果としてそうなったのだろうが、なんとなく、
とんでもなく、まわりに迷惑な感じもする。

このような話を朝日新聞の日曜版でしばらく続けていたと思う。
写真で見ると、昔の人は美しくなかったと感じる。
どうしてだろう。
わたしは現代風に化粧をした顔しか見ていないからなのだろうか。
この男性とこの女性がそんなにも強く思うなんて、なぜなんだろうと思ったりした。
外見が重要ではないのは分かるけれど。
同じボールペンでも、キティちゃんがついていたり、ブランドマークがついていたりすれば、
ちょっと違うというのと、似た心理だろうか。

栄養が変化し、すこしは遺伝子も変化しているのか。
写真の技術のせいか。
カメラの前でじっとしていてくださいといわれれば、かなり緊張もして、
結果として、そんな顔になってしまったのだろうか。

チベットの人たちとか、たとえば、ピッチャー桑田によく似ていたりして、
やはり古い日本の顔があると思う。

昔の人は生き延びるだけで大変だったのだろう。
感染症が怖かった。
うっかり悪い水を飲んで下痢が始まってそのまま死んだりしたようだ。

なりふりかまっていられないという場合の、
なりふりは外見ということなのだろう。

*****
「開きたる胸乳のごとく」というのはあんまりな話だが、
「空揺れて」というのだから、めまいがあったはずで、内耳か小脳か、自律神経失調症か、それとも、もっと重大な変調の始まりか、なんて思う。
結婚した、またはする、と聞いたときのショックをこのように表現するのだろうが、いいなあ、若いなあ。心因反応だ。
「嫁がざる日のきみなしすでに」とは大変にくどい言い方で、
くどいからいいのだけれど、どうなんでしょう。インド人みたいですよ。

コンセプトとしては分かるけれど、表現としては、私にとっては、魅力的ではないと感じる。
小野氏は交通事故で30歳代半ばでなくなったらしい。その若さも勘案して読むべきだと思う。

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最近は男でも女でも、美しい人は美しいと思う。
女性の父親の顔とか、男性の母親の顔とか、思い浮かべている。
最近街の様子を見ると、マンガによく似た人たちが多くて、驚く。
現実はマンガを模倣しているようだ。