発明の価値

みんなが大変だと心配している中で、その価値は変わらないと述べている人もあり、
別次元の話なのか、それとも本当に心配ないのか、不明。
言葉を濁す人もいて、興味深い。
「特許がとれそうなテーマを研究者に提案していく」と意欲的な人もいる模様で、
科学の古い姿を知る者にとっては驚きである。

知り合いが、洗濯粉石鹸を角砂糖の方式で固める特許をとった。
その後特に儲かってはいないらしい。
粉を固めて水に触れるとすぐに溶けるようにする技術は、各製薬会社でいま競っている段階で、
リリーのジブレキサ・ザイディスが一歩リード。

特許の話で有名なのはIBM。一杯特許をもっているので何があっても大丈夫だろうと聞いた。
マイクロソフトはウィンドウズがアップルの知的財産権を侵害していると裁判を起こされて、結局MSの勝ち。
コピー機の基本特許はゼロックスがもっているのだが、キャノンなどはその特許を侵害しないように新しい発明を重ねて、製品開発をした。リコーなどはそのあとを追いかけているのでますます道が細いのだが、それでもよくやっている。
インクジェットプリンターなどもその応用なのだが、こちらはキャノンが先行して、他社が追いかける。
みんなスレスレのことをしているらしくて、聞いていても、大変そうだ。

たとえば、農業で、誰ももっていないタネなら、お金を出して買うけれど、
「この間隔で苗を植えて、この時期にどれだけ水を撒く」なんていうあたりを
「知的財産権」と言われても、困るな。

中国のミッキーは微妙に違っていて、中国古来の伝来に基づいていると言い張る。

バイエル・チームも米ウィスコンシン大チームも成功していたのなら、
いずれ誰かが辿り着くに決まっているものだったはずで、
本当は誰が一番早かったなんて言っていないで、
「栄誉」だけを与えて、それでいいのではないかと、大変時代遅れなことを思う。
そんな話ではないのだというのも分かるけれど。
いままでさんざん悔しい思いをしてきたのだから、日本は。

ライバルがいたから頑張りがきいたという事情もある。
ライバルにも少しは得点をあげてもいいように思う。

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富士山があれば、てっぺんに立ちたいと思う人はたくさんいて、いずれ誰かが立つ。
それだけのことで、特にどうということでもないだろうな。

円周率の3.14のつぎは何かというような話で、どの数字かに決まっている。

一方で、本当に独創的で、現状では実際の生産物につながらないようなコンセプトは沢山あって、
それこそが本当の発明なのだけれど。
誰もそれを評価できない。天才過ぎるとも言える。
困った世の中だ。

世間に評価される程度の仕事が一番いいらしい。

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製薬企業も万能細胞に成功 特許出願で京大に先行か オール日本態勢に影響も <1> 
 
記事:共同通信社 提供:共同通信社【2008年4月11日】

 バイエル薬品(大阪市)の研究チームが昨年、人の皮膚からさまざまな組織に成長できる万能細胞の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製することに成功し、オランダの科学誌「ステム・セル・リサーチ」に発表していたことが11日分かった。

 同社は「ドイツのバイエル社が特許を管理しているので内容を把握できない」とコメントを避けているが、京都大の山中伸弥(やまなか・しんや)教授より前に成功し、特許申請している可能性もある。民間企業が特許を取得する事態になれば、再生医療実現に向け国が進める「オール日本」態勢での研究にも影響がありそうだ。

 研究は同社神戸リサーチセンター(昨年末閉鎖)の桜田一洋(さくらだ・かずひろ)センター長(当時)らが実施。人の皮膚細胞に山中教授と同じ4つの遺伝子を組み込み、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)とよく似た細胞をつくった。論文は昨年12月21日に投稿、今年1月31日に発表された。

 iPS細胞は山中教授が2006年に世界で初めてマウスで成功。人での成功に向け一気に研究競争が始まった。

 京大は昨年11月、米ウィスコンシン大と同時に成功を発表。山中教授は「昨年7月に成功した」と話しており、京大の特許申請は発表の直前だった。バイエルの論文は成功時期を明らかにしていないが、再生医療に詳しい専門家や京大の知的財産担当者は、培養に要した期間などから「山中教授よりバイエルが先に成功し、特許申請した可能性がある」と指摘している。

 桜田氏はセンター閉鎖後、米ベンチャー企業の最高科学担当責任者に就任した。
 
「関係者談話」マウスで特許に価値 <2> 
 
記事:共同通信社 提供:共同通信社【2008年4月11日】

 京都大の中辻憲夫(なかつじのりお)教授の話 バイエル社が人のiPS細胞で先に特許申請したかどうかは分からないが、山中伸弥教授が2006年に世界で初めて、マウスでiPS細胞を作製したことに大きな意味がある。京大はその際に特許を出願しており、その価値は変わらない。人での成功も、山中教授らが論文発表で先行しており、学術的に大きな問題ではない。
 
「実用化に影響も」と当惑 研究競争さらに激化も <3> 
 
記事:共同通信社 提供:共同通信社【2008年4月11日】

 人のiPS細胞研究で、京都大に先んじて企業が特許を押さえていた可能性が浮上した11日、関係者らは「将来の実用化に当たって影響が出る恐れもある」と当惑の表情を浮かべた。一方で、医療応用に欠かせない安全性の向上など、iPS細胞をめぐって残る成果の争奪に向けた研究競争が、さらに激化する可能性も指摘される。

 京大の知的財産グループの担当者は「バイエル薬品の論文の存在は知っていた。京大より先に(人の細胞での特許を)申請した可能性もあるが、詳しくは言えない」と言葉を濁す。

 一方、iPS細胞を開発した山中伸弥(やまなか・しんや)京大教授を中心とする「オール日本」の研究推進態勢を検討している総合科学技術会議の関係者は「人でのiPS細胞の発表は山中教授と米ウィスコンシン大が同時だったので、米に特許を押さえられる可能性を考えてはいたが、交渉相手が営利企業となれば、支払う特許料の面などで違いが出るだろう」と懸念する。

 ただ、マウスのiPS細胞の基本的な特許は京大が押さえている上、人での臨床応用に向けた研究競争はまだ続いており、発がんの恐れもあるウイルスを使わない安全なiPS細胞作製方法の確立など、重要な成果はまだ出ていない。

 この関係者は、安全な作製技術などを世界に先駆けて実現できれば、優位を保てるとしており、「より良い成果を多く出すことが重要。ここで手を抜くわけにはいかない」と指摘している。
 
知財ビジネス、出遅れ 新万能細胞iPSの真価/4 
 
記事:毎日新聞社 提供:毎日新聞社【2008年4月11日】
 
新万能細胞iPSの真価:/4 知財ビジネス、出遅れ

 ◇大学の特許収入–米は1498億円、日本は5億円

 3月下旬、経済産業省で非公開の会合が開かれた。「人工多能性幹細胞(iPS細胞)産業応用促進に向けた産学対話」。製薬会社や機器メーカー計16社と、iPS細胞に詳しい研究者4人が参加した。

 あいさつに立った倉田健児・同省生物化学産業課長は「いかにスピード感を持って研究を進め、出口の医療や産業に結びつけるかが大事だ」と強調した。

 ただ、国内では2月にタカラバイオ(本社・大津市)がiPS細胞研究部門の新設を発表した以外、表立った動きは見えない。米国では産業化に向けた動きが活発化し、大手投資会社などが今年1月、iPS細胞技術を実用化するベンチャーを創設。米ハーバード大などの研究者は、ヒトiPS細胞作成の論文発表からわずか1週間で関連ベンチャーを設立した。

 産業化の源である特許でも、日本発のiPS細胞の技術で海外が取得する可能性が出てきた。「マウスiPS細胞作成からヒトの成功まで約1年半あった。その間にだれかがヒトでの特許を出願していてもおかしくない」と、京都大iPS細胞研究センター関係者も今年2月、不安を口にしていた。

 国内企業や研究機関はこれまで、バイオ分野の研究開発で欠かせないDNA解析技術の「PCR法」や、エイズ治療薬などの特許を海外の大学や企業に押さえられ、莫大(ばくだい)な利用料を支払っている。

 経産省が9日にまとめた「幹細胞関連技術」の特許出願状況をみると、1998-2003年の日米欧中韓当局への出願件数は約6560件。米国が53%を占め、欧州の20%、日本の14%を大きく上回る。

 米国圧勝の背景の一つに制度の違いがある。政府資金で取得した特許でも大学や研究者のものにできる法律があり、米国の大学が04年に特許で得た収入は約1498億円に達する。米国より20年遅れの99年に同様の制度を取り入れた日本は約5億4000万円だ。

 生駒俊明・科学技術振興機構研究開発戦略センター長は「特許に精通した人材が大学にはほとんどいない。知財管理に回す資金も少ない。ベンチャー設立にも及び腰。だから米国に負ける」と嘆く。

 iPS細胞の成功を受け、ようやく変化の兆しが表れている。京都大、慶応大に相次いでiPS細胞研究の知財戦略を積極的に支援するチームができた。慶応大知的資産センターの羽鳥賢一所長は「研究者の発明届け出を待つだけではなく、特許がとれそうなテーマを研究者に提案していく」と意欲的だ。

 しかし、知財管理は、なお日本の弱点だ。多くの特許出願に携わる津国肇・津国特許事務所長は「知的財産はカネそのもの、という意識が日本では低い。論文発表が優先され特許出願が後回しのケースもある。iPS細胞は新しい発想に基づき、幅広い恩恵が期待できる技術だ。最初の特許戦略を誤れば、国民が払うツケは膨大になる」と警告する。

 ■ことば

 ◇特許と出願

 新しい技術などの発明者に、一定期間、独占的な権利を与え、発明を保護するのが特許制度。発明内容を規定の書類に記載して特許庁に出願し、審査で新規性などの要件を満たすと認められれば、特許権が得られる。外国で特許権を得るには、各国で直接、審査を受ける必要がある。ただし、国内出願から1年以内に特許協力条約に基づき国際出願をすれば、この条約に加盟する各国での出願日は、原則として国内出願日と同じになる。各国での出願手続きは、国内出願から2年半以内にすればよい。発明技術が製品化にたどりつくまでには、通常10-15年かかるといわれる。同じ内容で複数の出願があった場合、米国は先に発明したと認められた人が特許権を得る「先発明主義」を取っている。米以外の国は、先に出願した人が特許権を得る。