生老病死を支える―地域ケアの新しい試み 方波見康雄著 (新赤版992)
北の小さな村で地域医療に新たな試みをしてきた開業医の提言
北海道空知郡奈井江町――かつては炭坑でにぎわったが、今は過疎と高齢化に悩む小さな寒村です。著者はその地で、父から医業を継承し、40年にわたって地域医療に尽力してきた開業医です。
この北の小さな町で、医療の先進的な試みがなされました。それは病院の開放型共同利用です。家庭医と病院が連携し、患者本位の医療・介護が受けられるようになりました。前例の無い取り組みに、最初は医師会の反対などさまざまの困難がありましたが、著者の熱意で克服しました。開放型共同利用によって、患者さんが自分らしく納得した人生の締めくくり方を実現できるようになったのです。
生老病死は、人間の必然です。しかし医者としてそこに伴走していくということはどういうことなのか、本書では、著者の長年の体験に基づきながら、やさしく語りかけます。
なかでもご自身の闘病・入院体験を紹介しながら、高齢化社会の医療のあり方、地域医療の課題、行政との関わり方などを具体的に語るところは迫力があります。
最後に、近年の市町村合併が、地域医療にもたらす問題点を挙げ、これからの地域と医療のあり方への提言を行います。
(編集部 川上隆志)
■著者紹介
方波見康雄(かたばみ・やすお)
1926年 北海道奈井江町に生まれる
1952年 北海道大学医学部卒業
専攻―内科学、老年医学、高齢者問題、生命倫理
現在―医療法人社団滋佑会方波見医院理事長。臨床のかたわら、北海道大学医学部非常勤講師、藤女子大学教授(臨床栄養学・生命倫理・死生論)、北海道医療大学客員教授、北海道医師会常任理事、日本医師会医事法検討委員会委員などを歴任
著書―『未来の人間学』(共著、春秋社)、『がんとの対話』(編共著、春秋社)、『ターミナルケアへの提言―いま、何が問われているか』(編共著、金原出版)
■目次
はじめに
第一章 地域で老いを診る―故郷で医療を継承して
父の往診鞄/父業の医療を継承する/開業医の医療―人間と病人・患者と病気と/地域で老いを診るということ
第二章 医療と生老病死―いのちの完成を目指して
奥行き深い出会い/死に場所の選択/忘れられた人生の継続性/癒しと支えと慰めを/生老病死と長寿社会―高齢者の死の臨床/死の解決―あるお年よりの話/老いと病と死の受容をめぐって/高齢者の「いのちの完成」をめぐって/天与の恩寵―故郷で百寿者を診る
第三章 地域で老いを支える―小さな町での新しい試み
地域でともに診る―病院の開放型共同利用ということ/小さな町での新しい試み/老いを支える町づくりへ/町立病院を回診する/生活回診―わたしの流儀
第四章 老いて自立を保つ―最後の成熟に向けて
あたりまえのことができるか/老人と鏡/おちつかれたか/一日仕切り/雨水余滴/いのちの風光/蝉と老いとターミナルケアと
第五章 老いて病を得て―わたしのカルテから
心臓突然死の危うきに立つ/心臓バイパス術を前にして/ICUに入る/傷痕/森を歩く
第六章 老いを生きるということ―地域ケアの新しい形
懐かしき友への手紙/続・懐かしき友への手紙/最後の成熟に向けて
終章 市町村合併と地域医療の行方
あとがき
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著者については専門も違い、よく知らないが、地域医療のあり方を考える上で参考になる。
地域で生きて家庭で死ぬということが難しい時代になってしまった。
生死を解釈する枠組みがなくなった。
宗教を共有していないし、唯物論を共有しているわけでもない。
人類の歴史の中で極めて特異な、不思議な光景である。
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冬の往診も大変そう。
患者さんの通院も大変だろうな。
最近はバスの本数も減らされているというし。