ワーク・ライフバランス

ワーク・ライフバランスとは
ワーク・ライフバランスの目的は、仕事とプライベートをうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出すことです。
たとえば、仕事において、高い付加価値を提供し成果を上げるためには、広い視野や人脈が必要ですが、それらは仕事以外の場所で身につくことが多いと思いませんか?
つまり仕事以外の場を大切にすることによって、仕事も短時間で成果を上げることができるようになるのです。いいかえると、仕事での成果を上げるために「働き方の柔軟性を追求する」ということがワーク・ライフバランスの核心であるということです。
「ワーク」と「ライフ」を“ハーモニー(調和)”させることで、仕事でも家庭でもより豊かな生活ができるのです。

ワーク・ライフバランスが生まれたきっかけ
ワーク・ライフバランスはもともとは欧米で普及した概念です。

●アメリカでは・・・
米国では、1970年代からサービスを中心とした第三次産業への業種転換や女性の権利意識の高まりにより、女性の社会進出が急速に進みました。
その後、1980年代後半の不景気で各企業がリストラを行う際に、少数精鋭による効率的な業務遂行を進める一環として、優秀な女性を積極的に登用するため、仕事(ワーク)と家庭(ファミリー)を両立できるよう配慮する「ワーク・ファミリー・バランス」施策を導入する企業が増えました。これらの企業の業績が向上したことにより、次第に他の企業にも波及していったのです。
さらに、1990年代に入ると、女性社員に限らず、より多くの多様な社員にとって働きやすい環境を整備する「ワーク・ライフバランス」や「ダイバーシティ」の概念への移行が起こり、さらに様々な人事関連の制度が開発されました。

●イギリスでは・・・
イギリスでは、1980年代にサッチャー政権が労働分野の規制緩和を進めたことやサービス産業の拡大、家族構成の多様化などにより女性の社会進出が進むとともに、1990年代の長期的な景気拡大に伴う労働需給の逼迫から大企業を中心に優秀な社員の採用や定着を目的にした柔軟な働き方についての諸施策が普及しました。
また、1997年に成立したブレア政権の下、2000年から官民一体のキャンペーンが展開され、これがワーク・ライフバランスの普及に大きな影響を及ぼしました。このキャンペーンの中心に位置づけられたのが、ワーク・ライフバランス施策を導入するためのコンサルティング費用を政府が補助するという「チャレンジ基金プログラム」です。また、政府は「フレキシブル・ワーキング法」の施行など法律面の整備も進めたこともあり、1990年代初頭には先進国中最低レベルだった労働生産性は、今では日本やドイツを上回り、長らく低迷していた就業率も回復傾向にあります。労働生産性と就業率を高めることに成功した要因のひとつがワーク・ライフバランスへの取り組みにあることは間違いないといえるでしょう。

●日本では・・・
では、日本におけるワーク・ライフバランスの取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。

日本では、ワーク・ライフバランスというキーワードが浸透する前に、「男女均等推進」と「ファミリー・フレンドリー」の2つの考え方が提唱されました。
「男女均等推進」の流れは、1985年のいわゆる男女雇用機会均等法の成立がひとつのきっかけとなりました。その後、1997年に改正男女雇用機会均等法が成立し、「ポジティブ・アクション(すでに生じている事実上の男女格差を積極的に解消するための策)」や「セクシャル・ハラスメント」に関する規定が盛り込まれました。2006年にも男性への差別禁止、間接差別禁止などを盛り込んだ改正が行われ、2007年から施行されています。
この「男女均等推進」と並行して、「ファミリー・フレンドリー(両立支援)」の流れも活発化していきました。これは1991年に成立した育児休業法から本格化したといえるでしょう。そして、大きな転機となったのが2003年に成立、2005年に施行された「次世代育成支援対策推進法(次世代法)」です。2007年には、この次世代法に基づき適切な行動計画を策定し、目標と達成するなどの7つの基準をすべて満たした事業主は、次世代支援に対する取り組みを実施しているとして認定を受けられる制度もスタートしました。

このように、日本では現在、次世代法によりワーク・ライフバランスの取り組みが企業の間で急速に進みだしています。今後は、欧米での経緯や男女均等推進の流れも踏まえながら、日本企業にとってあるべきワーク・ライフバランスの形を本格的に形作る段階に入っていくといえるでしょう。
 
ファミリー・フレンドリーなどとはどう違うの? 
「ワーク・ライフバランス」と似た概念として、いくつかのキーワードがあげられます。それぞれの特徴を把握して、ワーク・ライフバランスとの類似点・相違点を知ると、ワーク・ライフバランスの必要性をより深く理解できます。

●ファミリー・フレンドリーとは・・・
ファミリー・フレンドリーは一般に「両立支援」と訳されることが多く、「企業が社員に対して、働きながら育児や介護をしやすい制度や環境を整える」という意味で使われます。
厚生労働省では、「ファミリー・フレンドリー企業」を「仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち、多様で柔軟な働き方を労働者が選択できるような取り組みを行う企業」と定義し、具体的には次のような4つの柱があるとしています。

●男女均等推進とは・・・
男女均等推進とは、「男性・女性という性別にかかわりなく、その能力を発揮するための均等な機会が与えられ、また評価や待遇においても差別を受けない」ことをいいます。

●ダイバーシティとは・・・
欧米では、「Diversity and Inclusion」、すなわち「多様性と受容」と表現されます。日本ではこれを縮めて「ダイバーシティ」と呼ばれています。これは、性別はもとより年齢、国籍、人種、宗教などバックグラウンドの異なる様々な人材を受け入れ、それぞれが個性を発揮できるようにする、という概念です。

●CSRとは・・・
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で、「企業の社会的責任」と訳されます。企業も社会を構成する一員として、経済活動における法令遵守の徹底、利害関係者への情報公開を進め、さらに社会問題や環境問題にも積極的に貢献していくべき、という考え方をいいます。
様々な企業不祥事が続発する中で強く意識されるようになってきた概念で、ワーク・ライフバランスやダイバーシティも、広い意味でのCSRにかわるものともいえるでしょう。
ただ、CSRはあくまでも企業の「責任」を問題とするものであり、企業の利益創出や経営メリットを追及する意味をも含むワーク・ライフバランスとはやや次元が異なる面も有しています。

以上をまとめると、単に家庭やプライベートを充実させる、ということにとどまらず、仕事での成果をあげるために「働き方の柔軟性を追求する」ということがワーク・ライフバランスの核心である、といえるでしょう。
 
戦略としてのワーク・ライフバランス 
このように、日本では法律の整備や各企業の取り組みにより、「ワーク・ライフバランス」という概念も広がりつつありますが、福利厚生の1施策にとどまってしまっている現状があることも事実です。
次世代法はあくまでも会社を変えるきっかけであり、これをさらに一歩進め、企 業の経営戦略とつなげていくことが必要になっていきます。そのためには、ワー ク・ライフバランスを促進するためのメリットをきちんと把握しておくことが重要です。

昨年、富士通総研が2300社を対象に、育児休業の利用率や女性社員の平均勤続年数など約50項目を調べたところ、40以上の項目で平均以上だった120 社では、2002年までの10年間で経常利益が平均で27%上昇していました。 この結果をもとに、(株)富士通総研 経済研究所 主任研究員の 渥美由喜氏 は、「女性支援だけではなく、男性の育休や時短など両立支援策を積極的に行っ ている企業の業績や生産性が上がっているということがいえるでしょう。
一般企業では同じ期間にむしろ16%減だったことから、ワーク・ライフバランスへの取組みの有無で、両者は大きく明暗を分けていることになります。
こうしたデータを踏まえると、働かない人を優遇するのは無駄と考える経営者も いますが、両立支援に取り組むと、業務体制や組織の無駄の見直しが進み、優秀な人材を確保や引き留めの手段にもなり、企業にとってメリットに気付く意味は 大きいといえるでしょう。」と指摘します。

わたしたちは、このようにワーク・ライフバランスを促進することによって経営的にもメリットが得られることをお伝えし、ワーク・ライフバランスのとれた企業への変革のお手伝いをさせていただいています。 

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若者の場合の、文武両道のようなものですな。
東大の野球部の諸君は実に立派。

でもね、野球をすれば、早稲田に勝てないし、
勉強では部活やってない人にかなわないし、
難しい立場なんですよ。