変えてゆく勇気―「性同一性障害」の私から 上川あや著 (新赤版1064)
あきらめからは、何も生まれない
■著者からのメッセージ
本当に困っている人こそ、声を上げることが難しい。それが「性同一性障害」を抱えて生きてきた私の実感です。27歳まで「男性」として暮らし、30代に入り「女性」として生きるようになりました。男性の身体を持って生まれましたが、幼い頃から自分を男と思えませんでした。自分らしく振舞えば「男らしくない」と非難され、好きになるのはいつも男性。そんな自分が自分でも理解できず、誰にも相談できずに自分の心を偽って生きていました。世間は典型的であることを是とする空気に満ちていて、世間の「フツウ」から外れることが恐ろしかったのです。そんな私が、どのように「自分」を取り戻し、地方選挙に立候補するに至ったのか。この本では、まずそんな私の体験をつづっています。
また、顔を出して活動するようになってから、性的少数者に限らず、社会にはさまざまな立場の少数者がいて、かつての私と同じように声も出せずに暮らしていることを知りました。とことん困って苦しんで、模索を繰り返した今、私が感じるのは、この社会では「声を上げないといないことにされてしまう」現実です。黙ったままでは状況は変わりません。本の後半では、埋もれがちなニーズを掘り起こすことで生まれる実際の変化と、効果的に声を上げ、社会を変えてゆくヒントについても触れています。一歩を踏み出すことはたしかに勇気のいることです。でも、声の上げ方を工夫することで、必ず応えてくれる人に出会えるというのも私の実感です。
「この社会も、まだまだ捨てたものではない」。本書を読んで、少しでもそんな気持ちになっていただけたら、著者としてそれに優る喜びはありません。
■著者紹介
上川あや(かみかわ・あや)
1968年、東京都生まれ。
1990年、法政大学経営学部卒業。
1998年、「性同一性障害」であるとの診断を受ける。
2003年4月、「性同一性障害」であることを公表の上、世田谷区議会議員選挙に立候補し当選、同年5月より世田谷区議会議員。
2000年1月から、「性同一性障害」を抱える人向けの勉強会や交流会、一般向けのシンポジウム開催など、「性同一性障害」をもつ人々の自助・支援活動に携わる。現在では、性の問題に限らず、多様な社会的少数者の環境改善に関心を寄せている。
共著に『多様な「性」がわかる本』(高文研)
■目次
はじめに
第1章 「私の戸籍は男性です」―政治家になった
1 顔を見せて訴えなければ
2 手探りの選挙活動
3 変わってゆく街の空気
第2章 私は誰?―性を見つめて
1 仲良しは女の子
2 第二次性徴
3 孤独感と罪悪感の中で
4 サラリーマン時代
5 「もうごまかせない」
第3章 性を移行する―居場所を探して
1 初めて仲間に出会う
2 性を移行する
3 「女性」としての暮らし
4 社会保障制度が使えない
5 司法への絶望
第4章 性別変更に道を拓く―「性同一性障害者特例法」の成立をめぐって
1 議員立法の知らせ
2 国会のルール
3 特例法の成立
4 なお残る課題
第5章 ちいさな声、声にならない声―当事者のニーズを掘り起こす
1 「常識」を疑うことから
2 一万五六〇〇人の「外国人」
3 七〇〇人の「オストメイト」
4 ひとり親家庭の実態
5 要約筆記と手話
6 失語症会話パートナーの養成
7 バラバラの「点字ブロック」
8 政策決定の現場で
第6章 沈黙から発言へ―「変える」方法
1 沈黙は「存在しない」こと
2 自己肯定感をもつ
3 確実に声をとどけるために
4 権利意識の危うさ
5 嫌がらせに負けない方法
第7章 「フツウ」って何だろう―寛容な社会とは
1 ボーダーライン、この恣意的なもの
2 性的少数者のいま
3 「フツウ」って何だろう
あとがき
◆もっと詳しく知りたい人のために
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アメリカで騒がれているものはやがて日本に上陸する。
そして現在上陸しつつある。
今、ドラマでもやっています。
診察場面も出てきます。