備蓄ワクチンを事前接種へ 検疫、医療従事者ら約6000人 新型インフルで政府

備蓄ワクチンを事前接種へ 検疫、医療従事者ら約6000人 新型インフルで政府

舛添要一厚生労働相は15日の閣議後の記者会見で、新型インフルエンザの発生に備えて国家備蓄しているワクチンの一部を、検疫担当者や医療従事者ら約6000人に事前接種する方針を明らかにした。

16日に開かれる厚労省の専門家会議に諮り、了承されれば本年度中にも実施する。同省によると、備蓄ワクチンの事前接種が実現すれば、世界初という。

発生時に最前線で対策に当たる人に基礎免疫をつけるなどの狙いがあり、有効性、安全性が確認できれば、社会機能の維持に必要な約1000万人に、事前接種を拡大することも検討する。

このワクチンは、ベトナムやインドネシアなどで採取した鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)を基に製造した「プレパンデミックワクチン」。政府は計2000万人分のワクチン原液を備蓄し、現行の行動計画では、新型の発生後に接種を始めることになっていた。

厚労省の計画によると事前接種は「臨床研究」として実施。検疫、税関、入国管理の担当者や感染症指定医療機関の医師ら、新型が発生した場合に水際対策などに当たる人たちに接種する方針。

同省はこのほか、備蓄ワクチンをさらに1000万人分追加することや、新型が発生した後に製造するワクチンについても、従来約1年半かかるとされていた全国民分ワクチンの製造期間を、半年に短縮できる技術の研究を推進することを検討しており、これらについても併せて専門家会議で了承を得たい考え。

▽新型インフルエンザ
新型インフルエンザ 鳥インフルエンザなど人に感染しにくかったインフルエンザウイルスが、感染しやすい性質に変わるなどして発生する新型の感染症。大半の人が免疫を持たないため短期間で世界に大流行する恐れが強く、発生した場合、国内で最大64万人が死亡すると政府は推定している。インドネシアなど14カ国で鳥から人への散発的な感染が続き、4月8日までに239人が死亡した鳥インフルエンザ(H5N1型)が、新型に変異する事態が最も懸念されている。

(記事提供:共同通信社)