新聞は半年に一度役に立つ

何かに熱中していたら
時間が過ぎているのも気付かず
あわてて施錠して警備装置をセットして外に出たら
雨が降っていた

ビルの中にいたら分からないくらいの雨だった
傘はビルの中にあるが
警備装置を解除するのはとても面倒なので
手元にあった新聞を頭に載せて歩いた
雨よけにはそれで充分だった

最近は新聞を読む時間がない
四つに畳まれたままで
積みあがっている
この半年ではじめて新聞が役に立った

電車に乗ると傘を持った女性が乗り込んで
座席に座り
隣の男性との間に傘を斜めに邪魔かなという感じで置いて
実際男性は邪魔そうにしていたのだが
バッグからハンドクリームを取り出して
手に塗り始めた
確かに手の表情は美しく
しぐさに色艶がある
塗った後で傘をとって隣の男性の邪魔にならないように持っていた
ハンドクリームを塗ることがそれほど大事なのだろうか
手を乾燥させてはならないという気迫があった

そんなことを思っているうちに新聞は見る見る乾いていった
新聞紙は水分の吸収も蒸発もいいものだ
花屋さんで包むときには新聞紙を使うことが多いのも分かる気がする
と感心して見ていたら社説が見えていた

いいことが書いてあった
これにも感心した
朝日新聞は読まなくても購読料を払い続けるだろう
応援のつもりだ
岩波書店の本も読む暇はないけれど買い続けるだろう
これも応援のつもりだ
丸善は理科年表しか売る気がないらしい

傘にもなるのだから
新聞は本当にいいものだ