鄙の家 あじさい咲くも 見る人もなし

鄙の家
あじさい咲くも
見る人もなし

鄙の雨
あじさい散るも
知る人もなし

その人がこの世界にいなくなって
その場面を知っているのは
私だけになった

私が忘れてしまえば
なかったことと同じなのだろうか
それとも微弱な電磁波となってこの宇宙に刻印されているのだろうか

そしてまた自由意志について思う
世界から消えたその人は自由意志について問題意識がなかった
自由意志はあるじゃないかそれでいいじゃないかと言った
いまその人の欠如した宇宙に生きて
自由意志はないとますます確信する
一秒後には確率の分布に従って世界があり
十秒後にはさらにあいまいな確率の雲が存在している
現在から見れば未来は確率的に存在していて
すべての可能性が存在していると言える
現在から見た未来は可能性である

現在から見れば過去はひとつしかない
未来から見て現在は必然になってしまう

この不思議な感覚がどうにも受け入れ難い

*****
ますます多くの人が向こう側に行ってしまった
しばらくの猶予があるのかと思っていたが
猶予はなかった

厳しい現実である

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