形なきものを分け合ひ二人ゐるこの沈黙を育てゆくべし

形なきものを分け合ひ二人ゐるこの沈黙を育てゆくべし
小島ゆかり

男と女は生活の用があって同居しているものである
その中で少しずつ心がつながる
その程度のものだ
心がどのくらいつながっているかを考え始めれば
つながっていない心ばかりが見えてしまうものだろう

沈黙を育てるのも良いが
ロマン的に過ぎるし妄想的に過ぎる
それぞれに用を足して時間は過ぎる
それだけなのだ
それだけでも円滑に行けばかなりの幸運である

その点では早くクールでニヒルな戦いの同士になったほうがいい
外部に敵がいればなんとか一体感を維持できる

自分みたいなくだらない人間と心がつながったりしたら
せっかくのこの人のいいところもだめになってしまうかもしれない
だから生活整えてあげることで充分だわ
そう割り切るもの良いと思う

一般に
自負心は自己愛の発露であり
それはおおむね過剰で妄想的である
恋愛の場面では多少過剰になることも必要であるが
いつまでもそうであってはうまくは行かないだろう

昔はそんなこともあったねえ
と照れている
そのくらいが健全である
何歳になっても恋愛を瑞々しく歌うと言うのは
健全な発達曲線ではない