淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で
こんな小春日和の穏やかな日は
あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと笑った
秋桜/山口百恵
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これまた見事に脱臭された
無味無臭誰にも嫌われない
定型イメージの積み重ね
人間は定型が根本的に好きなのだ
予想して
その通りのものが出てくることに安心する
安心したいから聞いたり歌ったりする
たったそれだけのことだ
常同行為と言ってもいいし
不安を打ち消すための強迫性行為と言ってもいい
それだけのものである
心配いらないと笑った
とまで言って安心させてくれるのだから親切この上ない