新米が炊きあがってねばねばしたふっくらした香りが台所中に満ちている
なんてすてきな時間なのだろう
セックスなんかよりずっとこの台所にいる時間が好きだ
レストランに行っても
こんなにすばらしいご飯の炊けた香りなんかしないのは
文化としてとても欠如しているのだと思う
あなたもきっとこの香りが好きだろうなあと
思って考えたら
理論的にはそうとも限らず
どうして私はそんなことを思ったのだろうと
考えてみた
私はご飯の炊けた香りが好きだ
だからあなたも好きだったらいいのにとは思う
ここで微妙に甘えというか依存というか強制が発生している
あなたがご飯の香りについてどう思っているかなど
あなたに確認しなければ分からないことだし
好きと嫌いの二つのカテゴリーだけがあるわけでもない
しかしあなたもきっとご飯の香りが好きだろうとか
ご飯の香りが好きだったらいいなというのは
なんだか幼稚な自己愛の延長物としてあなたを考えているような気もする
しかしながらそのくらいの甘ったれも
好きなんだから許してくれてもいいのじゃないかと思う
私の感受性を信用してくれるなら
一度のこの香りに包まれて台所で
ネギを刻んだりしてみてもらいたい
きっとこの幸せを分かってくれる
そのくらい甘えて思うくらいはいいでしょう?