はちみつは伝統医学では、何百年にもわたり抗菌作用を持つ天然の保護材として感染創に使用されてきたが、慢性副鼻腔炎の軽減にはちみつが有用である可能性が、カナダの新しい研究によって示唆された。はちみつに含まれる天然の細菌退治物質が、不快な疾患を引き起こす細菌を攻撃するという。
カナダ、オタワ大学(オンタリオ州)のJoseph G. Marsan博士らによる研究は、多くの慢性感染の原因である、いわゆる“バイオフィルム”(編集注=細菌が作る菌体外の多糖膜。膜内に異なる細菌が強固に集合し、抗生物質に対して抵抗性を示す)に対するはちみつの活性を実験室レベル(in -vitro)で評価したもの。ある種の細菌、主に黄色ブドウ球菌(S.aureus)や緑膿菌(P.aeruginosa)は、最も強力な抗菌薬でも侵入できないバイオフィルムの中で生存することで、抗菌薬の活性から自分の身を守る。
副鼻腔炎を引き起こす細菌が形成したバイオフィルムにはちみつを塗布した結果、はちみつはこれらの細菌に対して、一般的な抗生物質よりも高い殺菌作用を示した。ニュージーランド産のマヌカManukaハニーとイエメン産のシドルSidrハニーは、細菌のバイオフィルムに対して強力な殺菌作用を示し、現在用いられている最も強力な抗菌薬よりもはるかに優れていた。
Marssan氏は「今回の研究により、治療が極めて難しいこれらの慢性感染の管理に、ある種のはちみつが役立つことが示された。今後は、この活性を動物や患者の体内(in-vivo)で生かす方法を検討しなければならない」と述べている。研究は、米シカゴで開催された米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNSF)年次集会で発表された。
昨年(2007年)、はちみつが子どもの咳(せき)の軽減に有効であるとの研究結果を報告した米ペン・ステート大学医学部(ペンシルバニア州)のIan Paul博士は「はちみつは創傷内で増殖する細菌を窒息させ、創傷に有効であるというデータがあるので、これらの細菌に有効であることは驚かないが、副鼻腔炎治療に臨床的に使用できるかどうかは定かでない」という。