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 名古屋市の武藤鉦(むとうしょう)製薬が1927年から製造販売してきた入浴剤の製造を10月末に打ち切った。同商品が硫化水素自殺に使われたため全国の薬局が販売を自粛して売り上げが激減したからだ。20人足らずの従業員の一部解雇にも着手した。約80年の歴史を誇る看板商品が汚された悔しさと苦境に武藤俊明(むとう・としあき)社長は「この思いをどこにぶつけたらいいのか」と話している。

 同社によると、創業は1906年。愛知県清須市の工場での製造を10月末に打ち切り、来年夏ごろには工場を閉鎖する。現在唯一の商品のため売り上げの約7割を占める収入源を失う形となったが、会社自体は存続させ、今後は在庫販売や不動産管理を中心に据える。

 今年に入り、全国各地で硫化水素自殺が相次ぎ、インターネットを通じて、同社の入浴剤と別の市販洗剤を混ぜて有毒ガスを発生させる方法が広まった。日本チェーンドラッグストア協会(横浜市)は5月、加盟店に販売自粛を要請。同協会は7月末に自粛を解除したが、敬遠される傾向は変わらず、売り上げは通常の4割以下にまで落ち込んだ。

 武藤社長は「自殺に誤用する方法が(ネット掲示板などで)こんなに広がるとは思ってもいなかった。こんな形で製造打ち切りとなり、本当に残念で悔しい」としている。