嫉妬 堀田善衞「ゴヤ」15

—–タイトル「理由」の文章を承けて—–
そうねえ、それって、嫉妬でしょう。
世の中にはよくあるんですよ。
「ゴヤ」を読んだって書いてましたよね、えーっと、この絵、見たでしょう。

女性の演じる見事な曲芸。
こんな曲芸、不可能に決まってますけどね。
精神分析の人たちはこの馬を男性とか言ったりするわけだけれど、
堀田善衞は、
それよりも、背景の民衆たちに注目して、
女たちは、「落ちればいいのに!」と嫉妬の目を向けているのだろうと
書いていますね。
痛烈です。
そんなものでしょうね。この日本の現実は。目障りになったんですよ。
偉い人に敬意を表さなかったでしょう、あなたは。
むしろ挑戦的な態度だった。
そして急ぎすぎた。
バックがいなかったでしょう。
むしろ、後ろ盾をかってでた人と喧嘩をしたわけだから。
徒党を組んで仲間を増やすことも大事だった。
あなたはいいエンジンだけれども、やはり経験がなかった。
参謀が必要だったんだな。いまにして思えば。
権力っていうのは、そんな不遜で有能な人を取り除いて、
仲良し組合の利益を守ることが仕事なんでしょう。
長い時間が経てばどんな組織もそうなるんですよ。
利益権益の絡まない集団ならばきれいなままでいられるけれども、
その場合でもやはり、どっちが上かという意識は常にあるわけでしょう。
その社会にあった、上昇速度があるんですよ。
それを無視したら速度違反になっちゃう。
いずれにしても、簡単に縮めて言えば、嫉妬です。
世の中を知らない専門職の人はこんなことがあるんです。
まあ。世の中ばっかりしか知らなくて、自分じゃ何も作り出せない人ばっかり多くて、
それで日本はいま困っているんですけどね。

早い話、法律家がたくさんいて裁判がたくさんになると、
幸せにならないでしょう。頭脳があるなら、
農業でも工業でも生産部門に集中した方がいい。
法律家のわたしが言うのも変ですけどね。
それが健全で、「青年」的な社会ですよ。
やたら法律家が多くなって、著作権を延長しろなんて言い始めるのは、
「老齢化」した社会なんです。
著作権延長はまさに既得権益そのものです。
若い人はそんなもの気にせずに、「本質を模倣」して、法律に触れないように、
鮮やかにコピーすればいいのですよ。

話がそれましたが、
こんな風に人生を学んでいこうということです。
最悪じゃないですよ。
まだまだ。

お金の使い方ってことも考えなくちゃ。
これから裁判だとかなんだとかいろいろ時間も金もかかる。
それを考えたら、事前に賢く使っておくのも方法だった。
いまなら分かるでしょう。
必要経費だし、布石なんです。
ちょっと局所戦を急いだということもあったな、多分。
人生の大局を見て、布石も必要だった。

もっと言うとね、あなたがどんどん伸ばしていった、その方向に、
向こうはしっかり布石してあったということ。
あなたに一人勝ちをさせないように、
あなたに限らず誰にでも、一人勝ちはさせないんですよ、
そのために事前に投資しているんだ、彼らは。
その事前の布石に、まんまとひっかかったということだな、今回は。

サッカーで言う、オフサイドトラップなんかが分かりやすいかもしれませんね。
オフサイドトラップを卑怯者ということもできますが、
まあ、精神が許せないかもしれないが、戦術のひとつですから、
それも頭に入れて対処するしかないですよね。
対処の方法はあるわけですから、
賢くなればいいだけなんですよ。
未来を向きましょう。