歳にも似合わず
私は少年だった
心に満ちている思いを込めて
愛してると繰り返した
その他にはどんな言葉も正しくないようだった
それは遠い日の夏の終わり
その日も波が白く砕けていた
少し歩いて少し座った
江ノ島を背にして
サーファーは波を待っている
夕陽が横から射していた
愛していると繰り返した私に
その人は髪を揺らし笑った
その様子は私に既視感をもたらした
ああ いつか この場面を 経験したことがある
あれはいい思い出だ
多分この場面もいい思い出になるだろう
それだけで諦めなければならないのだ
それは若々しく肯定的で健やかな笑いだった
そのことがいまも私を慰める
髪は揺れ
瞳はやさしく濡れて
そこで時間が途切れている
いま思うのだが
それはあの人の大人の分別というものだった