本当かどうかは知らないが
棒高跳びのブブカは
世界新記録報奨金がめあてだった
生活のためにスポーツをしていた
スポーツマンは体調のいい時に
記録の限界に挑戦したくなる
しかしブブカはそんな素人くさいことはしないのだ
たとえ今日の体調なら8センチくらい高くしても飛べるかもしれないと感じたとしても、
1センチずつしか高くしない
チャレンジは1センチだけ
8回に分けて、8倍の世界新記録報奨金をもらった方がいいからだ。
ブブカが偉大なのは、1センチずつ記録を伸ばす苦しみに耐え続け耐え切ったところだ。
今日は体調がいい。8センチ上を飛べるかもしれない。
こんな日はあとないかもしれない。
そう思うと、8センチに挑みたくなるのが人情というものだ。
スポーツマンシップとはそんなものだ。
しかしブブカはビジネスマンだから、
そんなことはしない。
今日は一センチだけ上を飛べば、それで、世界新記録なのだ。
それで充分だ。
そして大会があるごとに、世界新記録を更新していく。
そしてインタビューに答え、報奨金をもらう。
このあと、8センチ上を飛べる日は二度とないかもしれないと弱気になる。
しかしその弱気を引っ込めるために練習を続ける。
そして予定通りに、また1センチだけ、記録を更新する。
これは実にすばらしいビジネスマンなのだ。
営業ノルマの達成はそんな要素がある。
調子がいいからと、数字を伸ばしてしまえば、
次のシーズンが苦しいことになる。
今期の実績を元にして、来期のノルマが決定されるとすれば、今期の数字を挙げすぎるのは、自殺行為である。ボーナスが下がる。
一度に数字をあげて、あとはノルマ達成不可能となってしまうよりは、
少しずつ、ブブカ方式で、コンスタントに、数字を達成していくほうが賢いのだ。
似たような話に、
論文の書き方がある。
実験成果が出たら、一回だけですべてを書いてはいけない。
途中報告も書く。
結果がでても、小刻みに分けて、部分部分で発表する。
いつもまだ公開し切っていない新しいデータを用意しておいて、
小出しにする。
最新部分が確かにあるが、凡庸である。しかし最新部分のおかげで、
論文として認められる。
最終的には、「何本」で数えられるから、内容分割発表方式は、論文におけるブブカ式である。