道徳と倫理の概念規定

普通の会話や文章で、道徳と倫理は同じように使われる。
道徳観に欠けると言う時と、倫理観に欠けると言う時は、
ほぼ同じ意味だろう。

学者の世界ではやや違い、
例えば、カントは、次のように区別する。

カントは「実践理性批判」において、道徳は定言的命令の自律の規範であるとする。
倫理は定言的命令の他律の規範である。

定言的命令とは、仮言的命令と対になるもので、定言的命令は無前提の「汝~すべし」であり、仮言的命令は、ある条件の下に、「汝…を欲すれば~すべし」である。

つまり、
道徳とは、無条件にそうしなければならないことのうち、罰のないものである。
倫理とは、無条件にそうしなければならないことのうち、強制力があり外部から要請されているものである。

従って、社会人として他人に要請できるのは、倫理であるということになる。

カントの哲学が日本語の倫理と道徳を規定しているわけではないので、これはあくまでもカントの定義である。

倫理は学校で教えることができる。
道徳は教えることは難しいだろう。
しかし大人の様子を見て、道徳心が育つだろう。

台湾総督の夫人や家族が不正を行ったとして報道がなされている。
あまりにも分かりやすい不正で、こんな簡単な悪事はしないだろうというレベルである。使い込みをしたかったら、見つからないようにマネーロンダリングするだろう。
なんだか、杜撰なでっち上げのような気がするが、それにしても、このような程度の低い話を止めることができなかったと言うことは、総督の政治力の限界を露呈したと言えるだろう。