先日、スタニスワフ・レム著「捜査」を読み、
多分、ポーの作品の中に似たようなことが書いてあったなあなどと思い、
読んでみている。
そういえば、ポーの作品については思い出もある。
大学一年生の頃だった。
丸谷才一の出身校である学校の、しかも、彼の学んだ学部の、秘書さんと知り合いになった。
ある日彼女が言った。
エドガー・アラン・ポーなんて、
子供の頃に読んだと思っていたのに、
最近読み直すととても新鮮だわ。
たとえばね、慣性の法則をさらっと書いているの。
重い物体は軽い物体より動かしにくいということでしょう。
そしていったん動き始めると、止めにくいということね。
それを精神的な面に関して言えば、
知的に優れた人は、最初に動き出すときに、
そうでない人に比べて、力が要るということなの。
そしていったん動き出せば、力強い。
そうかって、思って。
だから、そんな人のそばにいる人は、
普通の場合よりも、辛抱強く待つ必要があると思ったのよ。
ほどなくして彼女は幸せな結婚退職を迎えた。
精神における慣性の法則を理解したゆえだったようだ。
まあ、そんな思い出もある、ポーである。