谷川俊太郎「この純潔なるもの」推理小説について

推理小説についての短文である。
なるほどね。

現代に生きる我々が推理小説に求めるものは、
平和、静けさ、単純さ。
テレビドラマの水戸黄門と同じである。
すべては説明され、すべては理詰めである。

現実は混沌としていて、死の意味すら与えられていないのに、
推理小説の中には、美しく構成された、論理的な、完結した世界がある。
死には明確な意味が与えられている。
推理小説の中では、無意味に死ぬ者はいない。
その大いなる安心感。