マンションの隣の人は老夫婦である
ふたりとも75歳くらいだろう
めったに会わない
玄関ドアを通り過ぎる時
奥からとてつもなく大きなテレビの音が響いている
幸い部屋に入ってしまえば
何の音も聞こえない
あるとき用事があって訪ねた
奥さんは
わたしは耳が悪いのよ
だめだめ
というだけで夫が出てきた
夫は点滴の管をつないでいる
体が悪くて
寝たきりで
申し訳ない
家内は耳が遠くて何も出来ない
用事があったら週に一回来ている娘にいってくれ
という
イスラムについての学者さんだということで
書籍が溢れていた
新聞は朝日、日経、毎日を講読している
奥さんはクリーニングの人だったらもっていってもらってと怒鳴っている
テレビの音がガンガン響いている
いやはや たいへんなものだ
わたしはどんな風に年をとるのかと思うと心底怖い