子供の頃のこと、
記憶ははっきりしないのだが、
電子工作キットのようなものがあって、
とても単純なラジオの回路をつくり、
それに長いロッドアンテナをつないで、
イヤホンでAM放送を聞いた。
そのうちにいろいろなことをしたようで、
イヤホン端子を回路の中のいろいろなところに
くっつけてみた。
そのうち、ロッドアンテナ自体の二箇所に
イヤホン端子をくっつけて、それでも聞こえることが確認できたように思う。
アンテナは、電波を受け取り、それ自身で電流を発生していて、
それはイヤホンで聞くことができる、
電子回路はその電流を増幅しているだけらしい。
ロッドアンテナに発生する電流は、
ラジオ局がいくつもあるなかで、どれなのかという問題があるが、
それは多分、ロッドアンテナの長さにより、
もっとも効率よく受信できる周波数が決まるのではないかと思った。
まさかね、アンテナだけでラジオが聞こえるのだろうか。
ラジオの回路はくっついていたわけだから、
結局その回路が何かの働きをしていたのかもしれない。
また後のあるとき、
LPレコードを聴きながら、カセットテープに録音していたことがあった。
タクシーが近づいたときなのだろうか、
タクシーが無線で交信している様子が、
録音された。
レコードの上を滑る針が、
無線の電波が強すぎるせいで、
音に変換してしまったものだろうか。
このときは、以前に経験していた、ロッドアンテナのことを思い出していた。
その後、誰か、この関係の人に話を聞きたいと思いながら、そのままになっていた。
ついさっき、FMを聞いていたら雑音が混じっていて、
ラジオというものの存在がまざまざと感じられた。
それに関して、ロッドアンテナのことも思い出した。
子供の頃の経験は一つきりで替えられない。
そのことが痛いように私の胸に響いている。