今後、国際的な業務が増えるにしたがって、より多くの知的労働者が国をまたいで経済活動をおこなうことになる。日本の税法では居住者に対してのみ所得税がかかる。そして、少なくとも一年以上日本を離れて、日本に居所を持たなくなれば、国税上の非居住者とみなされる。その後は半年まで日本に滞在しても、非居住者の地位を維持することが認められている。
このような制度では、ある程度名声を確立したプライベート・バンカーや小説家、ミュージシャンなどは、主たる住所を香港などの国に移し、シンガポールや日本の間を行き来していれば、どの国に対しても所得税を払わないということが可能になる。
どの国でも年収が高いほど、所得税には高い税率を課す傾向がある。ファンドの運用によって何億も稼ぐような有能な個人にとっては、このような高額の所得税を払わないための移動に、異なった3カ国に居所を持つというのは何の負担でもない。
このような、所得税を払わずに各国を行き来して生活をしている人たちは、PT(Perpetual Travelers)と呼ばれる。
PTの概念を打ち出したのは、W.G.ヒル博士。彼は1989 年の著書『P.T.』において自由なライフスタイルを実現するためには、居住、労働、余暇、投資などに5つの国家を利用することを提唱した。