悲観論が主流であるが、
野村証券が楽観論も一部紹介しているので、
採録。
主に元気を出すため。
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株安継続という悲観シナリオ
世界の株式相場が軟調である。特に、この年末年始以降は、日々の値動きも非常に激しい。
世界経済失速懸念が株価調整の一因であることは間違いない。しかし、モノライン(金融保証保険)問題の影響も非常に大きいと考えられる。
米国のモノライン保険ビジネスが問題を抱えている。モノライン保険とは、証券の発行者が債務不履行などに陥った場合、代わって元利払いを保証する保険である。主要なモノライン保険会社はトリプルAの格付けを有し、その信用力を裏付けに、米国地方債やCDO(債務担保証券)などの保証を幅広く行っている。
サブプライム(信用力の低い個人向け住宅融資)問題が悪化するにつれて、保証対象となるCDOなどの劣化が進行することになる。その結果、それらを保証するモノライン保険会社の格付けにも、格下げ圧力が生じることになる。
仮にその格下げが実施された場合、保証対象の証券の更なる価格調整につながり得る。米モノライン保険の保証対象証券の規模は、2兆ドルを超える模様であり、そのインパクトは看過できない。欧米金融機関などに追加損失をもたらすだけでなく、米地方債への影響を介して、米国個人投資家にも問題が波及するリスクもあり得よう。
モノライン保険大手の格下げが本格化しないよう、大規模な資本増強策の実施が待たれる。すべては、その実現性と格付け機関の判断にかかっている。
仮に、資本増強策が具体化する前に、モノライン大手の格下げが現実のものとなれば、世界金融の混乱は継続し、米国株をはじめ世界株式は更なる調整局面を迎えかねない。それが悲観シナリオである。
株価急騰という楽観シナリオ
一方、モノライン保険会社が何らかの資本増強策を打ち出し、問題深刻化が回避されれば、株価は世界的に反発しよう。単なる「反発」というよりも、「急騰」と表現すべき楽観シナリオも視野に入り得る。
FRB(米連邦準備制度理事会)は金融緩和政策を加速させている。景気対策の側面も無論あるが、サブプライムやモノライン問題対策の面が大きいと考えられる。昨年9月に5.25%だった政策金利FFレートは、現在、3%にまで引き下げられている。特に、今年1月には1.25%幅もの急速な利下げが実施されている。
FFレートの引き下げだけではない。FRBは「入札型ターム物貸出制度」という新たな流動性供給方法を導入するとともに、極めて積極的に金融市場への資金供給を行っている。
そのような積極的な流動性供給は、「2000年問題」(電算機のシステム問題)当時でも見られた。当時の株式相場を振り返ると、同問題に伴う大きな混乱などが顕在化しなかったこともあり、2000年の前半にハイテク株などの上昇が一段と加速した。
仮に、モノライン問題への警戒が後退するとしよう。すると、「流動性大量供給」と「懸念された問題の顕在化回避」という組み合わせとなり、2000年問題当時の経験則が見えてくる。流動性相場の一気の加速であり、それが楽観シナリオである。
世界株式の先行きは、それらの悲観または楽観シナリオのいずれかに帰結する公算が大きい。それらの中間に落ち着く展開は、短期的には起こり得ても、長引く可能性は高くはなかろう。
1月下旬には、モノライン保険大手を監督する州政府当局が、資本増強策に関して欧米の大手銀行などと協議したことが明らかとなった。公的関与を意味するそのような動きは、この問題の最終的な着地点が、楽観シナリオに近いことを示唆しているとも考えられる。
米国連邦政府による1,500億ドル規模の財政刺激策が、早期に稼働する可能性も注目される。そのような景気浮揚策が、モノライン問題などを直接的に救うとは考え難いが、景気浮揚期待がリスク資産投資に慎重な資金の背中を押すことは想定される。言わば「間接的な」支援効果は生じよう。
いずれにせよ、今後数週間の展開によって、方向性は明らかとなろう。楽観と悲観の両シナリオを意識しつつ、その着地点を見極めようとする姿勢が求められる。
物価上昇率の加速は持続的か
ガソリンや食品をはじめとした各種身の回り品の値上げが相次いでいる。こうした物価の動きは消費者物価指数(CPI)で把握することができる。CPIは、家計の消費品目の価格を包括的にとらえた指標で、各品目の価格を消費構成比に基づいて加重平均することで求められる。金融市場で特に注目されるのは、基調的な動きを示す「生鮮食品を除く総合」(コアCPI)である。生鮮食品を除くのは、それらの価格変動が激しいためである。
コアCPIの動きを見ると、昨年10月に前年比+0.1%と10カ月ぶりの上昇となった後、11月に同+0.4%、12月に同+0.8%と上昇率を大きく加速させている。こうした動きが持続すれば、国内景気に悪影響が及ぶことになる。具体的には、消費者センチメントの悪化、実質的な購買力の低下により、個人消費が落ち込む可能性が高い。また、物価抑制のために、日本銀行が金融引き締めを行うことも考えられる。
では、物価上昇率の加速は続くのだろうか。今後の動きを見通すためには、価格変動要因に応じて、品目を分類することが有効である。野村證券金融経済研究所では、コアCPIを石油製品、基調部分(図の注を参照)、公共料金、米類に分類している。
それぞれの価格変動の主な要因は、原油価格、国内景気、制度変更、天候である。最近の物価上昇率の加速は、石油製品、基調部分による寄与が大きく、これらの動向が注目される。前者については、世界景気鈍化を背景に、原油需要が落ち込むことで、当面、上昇する可能性は低い。後者についても、国内景気鈍化の影響が遅れて出る形で、本年後半あたりから上昇率が減速すると見込まれる。これらの点を踏まえると、コアCPIの上昇率の加速が続くとは考え難い。コアCPIは本年後半あたりから上昇率を減速させると予想する。