2008年5月24日付朝日新聞opinion欄けいざいノートにて
小林氏が高齢者の新医療制度について書いている。
要するに、
この制度の本来の目的は、
増大する医療費を抑制すること、
医療費のための保険料収入を増やすことという。
その目的のためには、
必要な医療の水準を落とすことなく、
無駄な医療や投薬を、
患者や現場の医師が自発的に抑制したくなるような
インセンティブ(誘因)を制度に埋め込むことが望まれる。
医療費の無駄を少なくするためのもっとも簡単で効果的な方法は、
患者の自己負担を増やすことだ。
自分が医者に行けばその分損をするという制度なら、
無駄な医療を受ける高齢者は減り、医療費の総額も抑制される。
高齢者の窓口負担分を上げればよかった。
高齢者が自分個人の医療費を負担するなら、
損しないために、無駄な医療を受けないように行動する、
スポーツなど体調維持にお金をもっと使うかもしれない。
その結果、国全体の医療費も抑制されることになる。
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と、ここまで理解不能なことを述べておいて、
ここから、
高齢者の所得を圧迫してはいけない
全世代で高齢者医療を広く負担することが社会厚生を高める
医療費の財源は国民全体から徴収するのが望ましい
資産によって負担割合を変えるなら、
納税者番号の導入などの全体的な制度変更が必要
医療制度の個別の改正ではどうにもならない時期に来ているのではないか
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結論部分は常識的な話になってきている。
たぶん、
高齢者は暇で、無駄に医者に通っているとの前提があるのではないかと推定される。
その無駄を抑制するためには、保険料徴収の点で工夫・細工するのではなく、
自己負担分を上げればよかったという。
資産のある高齢者には沢山負担してもらってよいのであるから、
資産課税のためにも納税者番号制度を導入したらいいとのことらしい。
あるいは、納税者番号制度は無理だから、資産課税は諦めているということなのか、
よく分からない。
「無駄な医療や投薬を、患者や現場の医師が自発的に抑制したくなるような
インセンティブ(誘因)を制度に埋め込むこと」
って、インセンティブという経済方面の言葉が使われていますが、
誘因というのは控えめな話で、要するに「得をする」ということだ。
自発的に医療抑制すれば得をするような仕組みを埋め込みなさいということだ。
現場の医師にとっては、例の定額払い。医療行為をすればするほど損をする仕組み。なにもしないのが一番儲かる方式。
患者にとっては、自己負担分の値上げ。極端にいえば、全額自費にしてしまえば、「どうしても必要な場合」しか受診しなくなる。その上で、自費分を補うために個人医療保険に加入する。どの医療保険がいいか、インセンティブに基づいて判断する。医療保険会社はもちろん儲けるための会社だからインセンティブに基づいて行動する。
つまりはアメリカ型の医療である。
結果は、ギリギリまで我慢して、複数の疾病を抱え、高額の医療費がかかるようになってから、
支払いを補償する医療保険にも加入していない状態で、
救急搬送されてくる、
そこで医師はどうすればいいかということになる。
まず患者が加入している医療保険を確認し、
財産の現状を確認し、どこまでの負担なら耐えられるのか、判断する。
その範囲内で、「無駄な医療を抑制しつつ」診療する。
医療制度の破綻を防ぐには、
病人さんに全員死んでもらえばいい、
健康な人だけで安い保険料を維持しようという
ブラックなジョークがあるけれど、
ぼかしてはいるが、
ほぼ似たようなことを言っているようだ。
トヨタとキャノンが死んでも困るが、
高齢者が医療受診抑制して死んでも困る。
イージス艦を節約しても国民は誰も文句を言わないと思うがどうだろうか。