老年医学の基礎と臨床Ⅰを
読み始める。
研究者100人で分担。2008年6月10日の出版。6400円。
アリセプトについて考えていて
なにかヒントがないかと思ったため。
いきなり老化とは、老化はなぜ起こるかという、
学問ぽい話題。
そんなことは定義してもらわなくてもなあと思いつつ、読む。
個体が老化して死ぬことは、種の保存には必要なことなので、
合理的だと思う。
ただ、線虫で3週間、ショウジョウバエで3ヶ月、ラットやマウスで2―3年、
ヒトで80年とかなり差がある。
時間スケールをずらすと、生存曲線が一致するので、
老化のメカニズムは共通しているのではないかと考えられる。
そんなことも当たり前だなあと思いつつ、読む。
記憶力の低下はヒトで50歳、ネズミで15-20ヶ月である。
老化速度が大幅に異なると書いてあるが、
ネズミの何を検査しているかが問題だ。
老化は遺伝子にプログラムされたものであり、テロメア説で説明されている。
かつ、遺伝子が複製の途中で傷害されて変異する。
老化すると変異を訂正できなくなる。
結果として、ガンになる。
一方、異常タンパク質の蓄積については、
アルツハイマー、パーキンソン、白内障などで言われている。
ケミカルに言うと、フリーラジカル説や酸化ストレス説がある。
細胞老化については、
分裂老化という言葉もあり、
Population doubling level;PDLという。
ヒト胎児線維芽細胞で50―60.
これがヘイフリックの限界。
最大PDLに達してもただちに死滅するわけではなく、
培養条件がよければ、分裂しないままで何ヶ月も生存するといわれれる。
ミイラみたいな話。
ミイラからDNAを抽出して、ヒトに出来れば、ある種の再生で、
まさにエジプトの王が望んでいたことになる。
そして、その人の脳に、
エジプトについての全情報と、
その後の歴史についての全情報を与える。
かなりの程度で、その人が再生されるだろう。
王が望むのは肉体と共にもちろん魂の再生である。
情報の再生ということで魂の再生にどの程度なるものか、
まさに、物質と霊魂の問題になる。
アルツハイマーやパーキンソンでは
新池細胞が分裂終了細胞であることが問題になる。
神経組織には未分化の前駆細胞が含まれているし、
神経細胞を栄養する細胞、血管細胞などが重要な役割を果たしている。
老齢個体の問題点は、
幹細胞の分裂能力の低下であり、
そのために組織修復能力が低下していると考えられている。
加齢による組織の萎縮は細胞のアポトーシスによると考えられる一方、
アポトーシスが起こりにくくなっていると癌細胞が増殖し易いことにももなる。
インスリン/IGF-1のシグナル伝達経路は種を超えて保存され、個体寿命を制御する。
IGF-1(Insulin-like growth factor-1)は物質そのものは種を超えて同じではないが、
細胞内シグナル系で見ると、相同性があるという話のようだ。
長寿命の線虫がいて、調べてみると、
インスリン/IGF-1のシグナル伝達経路にかかわる遺伝子が関わっていることが分かり、
さらにショウジョウバエで同じことが分かった。
マウスでIGF-1受容体欠損ヘテロマウスが長寿命である。
Klothoトランスジェニックマウスが長寿命である。
DNA系の他にミトコンドリア系も調べられている。
長生きは難しい。
DNA修復関連酵素の欠損があれば多分早く死ぬはずで、
その通りになっている。
カロリー制限すると長寿命になることがわかっている。
酵母、マウス、魚などでデータがある。
カロリー制限による寿命延長に関する遺伝子部位も分かっている。
関係している酵素が、酵母、線虫、ショウジョウバエで分かっている。
その遺伝子のひとつはSIRT1というものだが、
カロリー制限の他に、ストレス因子が、この遺伝子の発現に関わっている。
この遺伝子部位の働きとして、
DNAの安定、細胞修復、細胞寿命延長、エネルギー生産量と使用量の増加、
などが分かっていて、
そのほかに適切なストレス反応があげられている。
つまり、ストレスに反応して適切なストレス反応をする遺伝子部位ということで、
そんな小さな遺伝子部位についての「ストレス反応」とは何か、
詳細は記載がないが、何を測定したのだろう。
行動ではなく、生化学的な反応のことだと思う。
ヒトの場合、実際に疫学研究で明らかになっている範囲で言えば、
アポリポタンパクE遺伝子のE4アリルが長寿に関しての
リスクファクターである。
一卵性双生児研究で、長寿に関しては、
60歳以下は環境要因が大きい、
60歳以上は遺伝要因が大きいといわれている。
60歳までの死因を考えると、環境要因の方が大きく、
遺伝子のせいではないということになるが、
感染症と殺し合いを考えると、そうだと思う。
憲法9条が世界に広まれば、
60歳以下の寿命はかなり違うだろう。
酸化ストレス oxidative stress が
思ったよりも大きく取り上げられている。
これは生体内の酸化と抗酸化の平衡の問題ということで、
これにストレスという言葉を使うのは誤解の元だと思うが、どうだろうか。
活性酸素種 ROS とか三重項酸素、スーパーオキシラジカル、ヒドロキシラジカルなど、
目に見えないものに対する命名が並んでいる。
ROSの90パーセントがミトコンドリア由来、
P450が関与など、病気や薬剤に関係していそうな話が並んでいる。
放射線や紫外線によるフリーラジカル発生の話で、
動物種の最長寿命Maximum life span potential;MLSPが
酸化傷害の蓄積量やOS防御能と相関する。
海辺で育った人たちはなんだか不利だが、
その分、新鮮な魚を食べているので、補われている気もする。
RNSは reactive nitrogen species で活性窒素種。
酸素と窒素が多いのは地上の現実なので、
ROS/RNS系が細胞を傷害する話も出てくるわけだ。
ビタミンC、ビタミンE、フラボノイドなどはこのあたりに関与するらしい。
しかし総じて、微妙な影響という感じがしないでもない。
転んで大腿骨骨折をして、そこから不具合が連鎖するとか、
そんな話の方が、寿命に関しては重大だ。