自己愛性格とは
1.プライドが高い
2.他人に共感するのが苦手である
3.他人の評価に敏感で、絶えず人の注目や賞賛を求める。逆に嫉妬の感情にとらわれやすい。
昔職人気質と呼ばれた性格は、これに近いという指摘もある。
1.コンピュータに接していると、能力があれば万能感を持ちやすいため、プライドが高くなり、自己愛性成分を培養する。
2.コンピュータを使っている限りは他人との共感が課題にならない。むしろ賞賛と嫉妬が前景にある。
3.他人との共感がないことの結果の一つであるが、他人との関わりが、賞賛されるか嫉妬するかといった平板なものになりやすい。
4.共感が苦手という点では統合失調症に近縁の性格傾向も、コンピュータやゲームによって培養されていると考えられる。
5.誰の心の中にもある、自己愛性成分や回避性成分、依存性成分、強迫性成分、演技性成分、衝動型成分、境界性成分、統合失調症質性成分、受動・攻撃性成分などの中で、ネット・携帯社会が特に自己愛性成分を拡大させていると考えられる。従って、個人の中で自己愛性成分は強まる一方で、社会全体としても自己愛性性格者の増大をみていると考えられる。
6.コンピュータと携帯と暮らす毎日は、幼児的な自己愛の保存と強化を可能にするだろう。欲求があれば、キーを押すことで即座に満たされる。それは幻想的万能感を維持させる。
7.ネット社会は自分の内部にある幼児的プライドや非現実的な自我理想の保存に働き、自分に都合のいい情報しか見ないという意識的無意識的検閲によって自我の傷つきを回避している。
8.自分は素敵という人たちも自己愛性であるが、アイドルを素敵と崇拝する人たちもまた、自己愛性である。崇拝されるべきアイドルを、正しく崇拝している自分たちは、これまた崇拝に値するのである。自己愛は延長する。アイドルサイトに集合する人たちの独特の性格傾向は、自己愛性といっていいものだろうと思う。宗教的な集団の一部もこのような力動の中にあると考えられる。
9.こうした背景の中でうつ病が発生すれば、当然、「自己愛性性格傾向を基盤としたうつ病像」になるはずであって、その特徴もいくつか抽出されている。昔のメランコリー親和型うつ病に代わって、種々の新型うつ病が議論されており、ディスチミア親和型うつ病、未熟型うつ病、神経症性うつ病、職場結合性うつ病、逃避型抑うつ、退却神経症、現代型うつ病、などと提案されている。このそれぞれと関連の深い現実的社会的環境的要素は何であるか、もうひとつは性格的要素は何であるか、そのあたりを整理できればよい。
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10.ネット社会が人間の性格傾向にどう影響しているかを考えるとき、集団の中での自分の位置を気にするヒエラルキー的心性の影響を考える。どの性格傾向にしても、極端に出やすいのではないかと思う。
10-2.一つには、ネット社会では人格の部分的交流であるため、実際の人間関係で見られるような、バランスの取り方がなくなり、片方の特性だけが突出するのだと考えられる。
10-3.集団の中での自分の位置を問題にする心性は、分割された集団から集団へ移動するにつれて、より先鋭化する。
11.ネット社会自体は水平的連帯になじむ道具である。むしろシゾイド的交流。他人のとげが怖い。
12.ヒエラルキー形成には昔流の人間交流の方がなじみやすい。官僚組織、マフィア、体育会系。
13.ネット社会にヒエラルキー的心性を持ち込むと、新しい劇場で昔の演劇が上演される。