堀田善衞「ゴヤ」(8)

堀田善衞「ゴヤ」読了。

全四巻で、最初の三分の二くらいはだいたいがスペイン宮廷の愚劣な歴史である。
後半三分の一になって歴史から脱し、堀田氏の筆も乗ってくる。

写真が白黒で不鮮明、しかも網羅的ではないのが残念である。

ゴヤの絵については、少ない知識の範囲では、まず着衣と裸の二つのマハ。
それから、子供を食べてしまう気味の悪い絵の系統の、いくつかの絵。
記憶の範囲では、色彩は古めかしく、赤が鮮やかで、黒が深い。
レンブラントに似た色。題材はおどろおどろしい印象であった。

いま読了して、まったく恐ろしいほどの人間がいたものであると思う。
堀田善衞ほどの人がこれだけ力を入れるのだから、多分、
すばらしいのだろうと思って読んだが、実際にすばらしい。

別の画集でゴヤの一連の絵を見ると、やはり低い評価しか与えられないと思う。
正当に評価されていない。正しい評価がされていれば、
絵の選択が異なると思う。